NHKのクローズアップ現代で特集されたECサイトの販売手法として、今やなくてはならない「ライブコマース」。では、ライブコマースとは一体どんなものなのでしょうか?
ライブコマースって何?と疑問に感じる読者のためにライブコマースの意味や日本市場と中国市場の解説、メリットや成功事例をお伝えします。
ライブコマースの意味とは?
ライブコマースとは何か一言で言えば「ライブ」と「コマース(ネットショッピング)」を掛け合わせたものです。ライブコマースの定義に関してはこちらのwikiをご確認ください。
ライブ配信を見ながらオンラインで商品を買える販売の形態を指し、「こういう使い方はできますか?」「素材をもっとよく見たいです!」といった細かな質問を視聴者が販売者に直接投げ掛けることも可能です。
よく比較されるものとして「オンライン接客」や「チャット接客」があります。この2つが基本的に1対1のコミュニケーションを前提としているのに対し、ライブコマースの場合は1対多数の効率的なコミュニケーションを前提としています。
近頃はライブコマース関連企業の業績も好調です。ライブコマース関連企業の株価についてはこちらをご確認ください。
ライブコマースの現状
次はライブコマース市場の現状を理解しましょう。日本はもちろん、世界トップレベルで浸透している中国市場も合わせて解説します。
日本のライブコマース市場の現状
日本では、2017年頃からライブコマースの歴史が始まり一般普及しました。しかし、ライブコマース普及のもっとも大きなきっかけは、2020年の新型コロナウイルスによる外出自粛の影響です。
コロナ禍で巣ごもり需要が拡大する中、多くの企業でECの活用が改めて注目されるようになりました。アパレルブランド「JOURNAL STANDARD」で知られるベイクルーズや小売業大手のイオングループなど、大手各社がライブコマースを導入し始め、それに伴って市場全体の売上も急速に拡大しています。
中国のライブコマース市場の現状
ライブコマースの火付け役になったのは2016年頃の中国市場だとされています。中国では、7 3億人のインターネット利用者のうち、約半数がライブコマースで商品を購入したことがあると言われています。
市場をリードしているのはWeChat、T-mall、タオバオといったサイトです。2日で3億円の売上が出た例や、「独身の日」などのセールが日本でも広く知られています。
ライブコマースの日本市場と中国市場との違いは?
ライブコマースの先駆けとなった中国では、「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれるインフルエンサーが配信を行うのが一般的です。
そのため、ライブコマースに興味を持たれた日本の企業様から「中国のようにKOLが出演しないと売上は作れないのでしょうか?」「日本で配信するならどういうKOLがよいのでしょうか?」といった質問をされることが多いです。
日本でもKOLを活用した事例も増えてきており、UUUMやももち、てんちむ、上司あさみ v6などのインフルエンサー(KOL)がライブコマースを行うケースも増えてきておりますが、中国と日本ではまったく状況が異なります。ライブコマースが中国で浸透した理由の一つに、偽物の商品が多く流通していることがあります。中国では「お店のおすすめは信用できない」というのが一般的で、KOLのほうが信頼されていて売上も作りやすいのです。
一方、日本は中国だけではなく海外諸国と比べてもお店やブランドへの信頼が厚い市場です。商品知識に乏しい著名なインフルエンサーが出演するより、商品に詳しく丁寧な対応ができるお店のスタッフが出演するほうが、ユーザーも歓迎する傾向にあります。
「ライブコマース=中国の例を参考にする」のではなく、日本の市場に合わせた適切な配信を行うことが、日本でライブコマースを成功させるポイントです。
また、
ライブコマースのメリット
ライブコマースの注目度が高まっている背景にはメリットが存在します。次はライブコマースのメリットを理解しましょう。
1.ユーザーと直接コミュニケーションができる
ライブコマースの最も大きなメリットは「ユーザーと直接コミュニケーションができること」です。ユーザーの声を聞くことはブランドとファンのつながりを強め、ロイヤルティーを高めるだけではなく、よりよい商品の開発や、スタッフのモチベーションアップにもつながります。これは今までのECでは不可能だったため大きなメリットと言えるでしょう。
2.商品の情報を素早く正確に伝えられる
ECは非常に便利なツールですが、商品の詳細を伝えることは不得意です。これは「お店で見てから買おう」「思っているものと違うかもしれないからやめておこう」と利用者の買い控えにもつながります。
しかし、ライブコマースであれば、商品の情報を素早く正確に伝えられるのはもちろん、ユーザーからの質問でその不安を解消することも可能です。これまでECで買い控えをしていたユーザーの後押しができるのは、大きなメリットの一つと言えるでしょう。
3.新規ファンを獲得しやすい
ライブコマースは「新規ファンの獲得」につながりやすいのもメリットです。インフルエンサーを起用することで、そのファンをブランドのファンにつなげたり、企画ものの配信をすることで商品に興味がない層を呼び込んだり、新規ファンを作るための新たな接点としてもライブコマースは有効です。
ライブコマースのデメリット
メリットの多いライブコマースですが、気を付けるべきポイントがあるのも事実です。デメリットを認識し対応することで、メリットや強みへと変えていきましょう。
1.運用コストの負担
導入を考えている企業様が見落としがちなポイントとして挙げられるのは「ライブコマースは運用コストがかかる」という点でしょう。ライブ配信は基本的にやり直しができないため、事前準備の負担が大きくなります。内容だけでなく、通信環境のチェックや告知も必要なため、慣れるまでは担当者への負担が大きいことは念頭に置いておくべきです。
2.地道な改善が必要
ライブコマースは一度配信して終わりではなく「地道な改善が必要」という点も考慮しておくべきでしょう。特に配信内容や出演キャストのスキルは、日々の配信でしか磨いていく方法がありません。チームで振り返りの時間を作り、外部の人間も巻き込みながらコツコツと改善を積み重ねる体制づくりが不可欠です。
3.出演者へのコンプライアンス教育の徹底
最後に気を付けるべきなのが、出演者へのコンプライアンス教育です。ライブコマースを導入する際、炎上を気にされるお客様は多いです。しかし、日本ではライブコマースで炎上することは考えにくいとされています。
これはファン以外の視聴者が少なく、中国などと異なり個人ではなく企業が配信するケースが多いからです。しかし、そういう状況の中でも気を付けるべき点はあります。特に多い事例は、医療・美容といった法律での規制が厳しい商品を紹介する場合です。
関連する法律を理解して紹介する必要がある商品の場合、とっさの一言が法律に引っ掛かる可能性があります。こういった事態を避けるためにも、出演者・スタッフに日頃からコンプライアンス研修を行い、アーカイブ動画をアップする前には必ず配信内容をチェックする、といった仕組みが必要です。
ライブコマースの成功事例
最後に、実際にライブコマースを活用している企業・ブランドの事例を紹介します。
食品でのライブコマース事例
まずは、オランダのチーズショップの事例を紹介しましょう。このライブコマースは、オランダの銀行がライブコマースの導入の実証実験として期間限定で実施したものです。
こちらのライブコマースの手法は、店舗の様子を長時間映し続けるというものです。もちろん映し出されるのは通常の業務の様子で、店員は通常の業務をこなしながらライブ動画閲覧者にチーズのこだわりやレシピなどを紹介します。
結果として、140ヶ国から55,000人の閲覧者があり80万円相当のチーズが購入されました。

ファッションビルでのライブコマース事例
続いて紹介するのは、オンオフ連動型のライブコマース。お店から配信するタイプです。
2018年10月にファッションビルのルミネがインスタグラムと連動したライブコマースを実施しました。こちらは、インスタグラムのライブ配信機能を使って実施されたライブコマースで、ルミネに出店する12のショップのアイテムを使って「大人っぽコーデ」を紹介しています。ライブ配信後はライブ内で使用したアイテム画像がインスタグラムにアップロードされ、消費者はアイテム画像をタップしてルミネのECサイト「アイルミネ(iLUMINE)」にて、アイテムを購入することができます。

また、ファッションビルのパルコでもライブコマースを実施した例があります。元HKTで、ライブコマース界ではおなじみの菅野裕子(ゆうこす)さんや、人気インスタグラマーのrinaさんが2018年1月に福岡PARCOの店内からライブコマースを実施しました。こちらは、キュレーション型ライブコマース・サービスのLiveShop!と連動したライブコマースで、福岡PARCOの店内から撮影されたライブはLiveShop!にて配信されました。LiveShop!にはパルコの店頭商品の取り置き・販売サービス「カエルパルコ」への導線が設置されているため、消費者は「カエルパルコ」からお目当の商品を買うことができるという仕組みです。
旅を体験できるライブコマース事例
人気インフルエンサーと一緒に旅をしているかのような体験ができるサービス「TaVision」、こちらはモテクリエイターのゆうこすさんが手がけるサービスです。「TaVision」の目的はライブコマースだけではありません。旅行中のインフルエンサーのライブ動画を閲覧することで「一緒に旅に行っているような楽しさ」を味わうことができます。また、旅行初心者向けの旅の情報提供も行なっています。
ライブコマースは、というと、「TaVision」に参画するインフルエンサーが旅行先でセレクトしたファッションアイテムを、Instagramのライブ配信で紹介します。紹介された商品はこちらのショップから購入することができる仕組みです。

アパレル(SPA)でのライブコマース事例
続いては、(GU)ジーユーの事例。この取り組みは、GUアプリ内の期間限定コンテンツ「GU CURATORS ROOM(ジーユー キュレーターズ ルーム)」として配信されました。また、こちらには泉里香さんなど18人の著名人がライブ配信を行い、お客様は泉さんとインタラクティブなコミュニケーションを取りながら、紹介している商品を、すぐにその場でご購入できるという内容でした。配信時間は5分程度と短く、実施目的は「販売」よりも「マーケティング」であると考えられます。著名人のファンにGUアプリのインストールを促し、インストール済み休眠ユーザーにアプリの利用を促す、MAU増加施策であると考えられます。

乗用車でのライブコマース事例
最後に紹介するのは、三菱自動車の「ナイトショールーム」の事例です。ライブコマースを実施するメリット(利点)は様々ですが、商品の細かな内容を伝えることができるのはライブコマース最大のメリット(利点)の一つではないでしょうか?消費者は高額な商品であればあるほど、細かなスペックや作りを確認します。三菱自動車の「ナイトショールーム」は高額商品の代表格である乗用車のライブコマースです。
「ナイトショールーム」では本社ショールームからライブ配信を行っています。販売する乗用車の細部の映像や、開発者・ゲストのトークをライブ配信することで、乗用車の購入を検討する消費者の購入意向を向上させることが目的です。同サイト内では、オンライン見積もりやカタログ請求などができます。

ライブコマースはECを伸ばすための必須手法
今やECの戦略のおいてライブコマースはなくてはならない手法です。今後、5Gの普及が進めば、ライブコマースの利用は一般的になり、需要はさらに高まるでしょう。
ECの売上を伸ばすために、ライブコマースの導入を検討してみてはいかがでしょうか。